渡辺曜の言動を「マウンティング」という概念から分析した記事になります。
1.マウンティングとは
皆さんは”マウンティング”という言葉をご存知でしょうか?
元々はサルなどが相手の背に乗って「自分の方が上だぞ!」と個体間の優位性を示す、そんな動物社会における順序確認の行為のことを指します。
この言葉を「女同士の言葉の殴り合い」に当てはめたのが漫画家の瀧波ユカリ氏。具体例をあげると、
「○○ちゃん、メイク上手でうらやましいなっ。わたしなんてメイク下手だからいつもほとんどスッピンだもん」
といったもの。一見すると「相手のメイク技術を褒めている」ように見えますが、実際は「スッピンでもいけるほど肌キレイアピール+相手の厚化粧にチクリ」という一種の攻撃であることがわかります。
このように女子の間では「一見笑顔で穏やかな雰囲気を保ちながら、相手に対して攻撃的言動を加える」ことを「マウンティング」と瀧波氏は定義しています。
で、ここからが本題です。
この「マウンティング」という行為は、実は渡辺曜にも当てはまるのではないか。この仮説をもとに、本記事では分析を加えていきます。
2.渡辺曜のマウンティングの事例
渡辺曜のマウンティングの事例としては次のようなものがあります。
2-1.第2話「転校生をつかまえろ!」
梨子「待って、勘違いしてない?」
千歌「ふえっ?」
梨子「私は曲作りを手伝うって言ったのよ。スクールアイドルにはならない」
千歌「ええぇ~!」
梨子「そんな時間はないのっ」
千歌「そっか~…」
渡辺曜「無理は言えないよ~」
〈第2話「転校生をつかまえろ!」〉より
ここでの渡辺曜の「無理は言えないよ~」というセリフ。
一見すると、「曲作りをお願いしている立場でありながら、さらにスクールアイドルになることまで要求するのは梨子にとって求めすぎである(=梨子に悪い)」という意味に読み取れます。
しかし上記のマウンティングという概念を念頭に考えてみると、別の意味解釈もできます。
すなわち、「(あくまで他人にである梨子にスクールアイドルになれというお願いするのは図々しいにもほどがあり)無理は言えないよ~(自分は幼馴染であって、千歌の無理に付き合えるだけの親密な関係性を有しているため問題ないけどね)」という解釈です。
この文章だけではこじつけにしか見えないかもしれませんが、上記の解釈はそれまでのアニメストーリーの文脈を考慮したものでもあります。
つまり、曜は第1話「輝きたい!!」にて、水泳部と掛け持ちというハードスケジュールを見越したうえでスクールアイドル部に入部しました。第2話「転校生をつかまえろ!」でも、昼休みの時間を千歌とのダンス練習に費やしていたこと、衣装づくりのデザイン・裁縫まで手掛けるなど、かなりの労力を千歌・スクールアイドル部に提供しています。
これは一スクールアイドル部員としても大きすぎる負担であり、それが許容されるのは「渡辺曜が高海千歌の幼馴染であるから」に他なりません。
このことを踏まえて改めて上記の台詞を考察すると、「無理は言えないよ~」とは渡辺曜の桜内梨子への「私の方が千歌ちゃんと近しい関係である」と主張する順序確認行為であり、同時に千歌との友情関係(=千歌ヒエラルキー)の上位者であることを再確認する示威攻撃であることが読み取れます。
このようなマウンティング行為は、もはや瀧波氏が提唱した「マウンティング概念」の枠を超えたものであり、言うなれば「渡辺マウンティング」と定義すべきものであります。
2-1-1.千歌ヒエラルキーの順序確認行為:渡辺マウンティング
以下、渡辺曜にまつわるマウンティング行為は、「渡辺マウンティング」と定義します。
「渡辺マウンティング」とは、千歌ヒエラルキーの上位者であることを主張する順序確認行為です。
また「千歌ヒエラルキー」とは、高海千歌との人間関係序列のことを指します。
以下の記事では、この渡辺マウンティングをもとに考察していきます。
2-2. 第3話「ファーストステップ」
千歌「やっと曲ができたばかりだよ。ダンスもまだまだだし」
渡辺曜「じゃ、あきらめる?」
千歌「あきらめない!」
梨子「なんでそんな言い方するの?」
渡辺曜「こう言ってあげた方が、千歌ちゃん燃えるから」
〈第3話「ファーストステップ」〉より
渡辺曜の言葉を咎める梨子に対して、「こう言ってあげた方が、千歌ちゃん燃えるから」と「自身の方が千歌を理解しているアピール」をしています。
千歌を理解している自分だからこそ、こんな言い方ができるし、またそれを言えるのが幼馴染の特権なのだという確信が読み取れます。
こちらも一種の渡辺マウンティングです。
2-3.第4話「ふたりのキモチ」
千歌「2人が歌ったら絶対キラキラする!間違いない!」
ルビィ「あっ…えっ…でも…!」
花丸「お、おら…」
千歌「おら?」
花丸「あっ!いえ、マルそういうの苦手っていうか…」
ルビィ「えっ!…ル、ルビィも…」
渡辺曜「千歌ちゃん、強引に迫ったらかわいそうだよ」
〈第4話「ふたりのキモチ」〉より
こちらも一見すると、後輩に強引な勧誘をする千歌を制止しているかのように見えます。
ただこの会話の前後の文脈として
ルビィ「…こ、こんにちは」
千歌「かわいい!」
渡辺曜「(暗黒微笑)」
〈第4話「ふたりのキモチ」〉より
梨子「そうよ。まだ入学したばかりの一年生なんだし」
千歌「そうだよね~。あっはは、かわいいからつい…」
渡辺曜「千歌ちゃん、そろそろ練習(露骨な話題転換)」
〈第4話「ふたりのキモチ」〉より
このように、作中で美少女とされている花丸・ルビィに対して、千歌が「かわいい!」と言及すると、渡辺曜は若干怪訝そうな対応を取るんですよね(ちなみに渡辺曜が高海千歌に「かわいい!」と褒められたことはアニメ全13話では一度もありません)。
この文脈を踏まえると、上記の「千歌ちゃん、強引に迫ったらかわいそうだよ」も、「ルビィと花丸がスクールアイドル部へ入部することを阻止したい」という無意識が働いた可能性があります。あるいはもっと単純に「2人がかわいいと言われたことが面白くない」と取ることもできるでしょう。
2-4.第5話「ヨハネ堕天」
もし渡辺曜が花丸・ルビィに対抗心に近い感情を抱いていると仮定すると、第5話の言動も別の意味解釈が可能となります。
ルビィ「ライブの歌は評判良いんですけど…」
千歌「それに新加入の二人もカワイイって!」
ルビィ「そうなんですか!?(嬉しそうに)」
渡辺曜「特に花丸ちゃんの人気がすごいんだよね」〈第5話「ヨハネ堕天」〉より
千歌が新加入の1年生2人がかわいいと褒め、ルビィが「そうなんですか!?(嬉しそうに)」と喜んだ直後に、 「特に花丸ちゃんの人気がすごいんだよね」とわざわざ花丸を上げてルビィを下げるような発言をしています。
これは千歌にもっともかわいいと言われているルビィへの、渡辺曜の嫉妬から来る発言とも読み取れます。
もっとも渡辺曜は、花丸に対しても似たような発言をしています。
梨子「なっ、なにを押したの!? いきなり!」
花丸「…え、あ?…えへ♡ 一個だけ光るボタンがあるなあと思いまして…」
梨子「大丈夫?(PC触る曜に向かって)」
渡辺曜「衣装のデータ保存してたかなー?」
〈第5話「ヨハネ堕天」〉より
「衣装のデータ保存してたかなー?」と花丸への当てつけとも取れる発言をしています。
まあ手塩にかけて作った衣装データを消されたら、怒るのは自然なことだとは思います。
ともかく、第5話での1年生2人に対しての発言は、渡辺マウンティングとも解釈できるものでしょう。
第5話については別記事でも色々と分析しているので、よろしければこちらもどうぞ。
2-5.その他それっぽい台詞
・渡辺曜「やっぱりここにいたんだね」(第7話「TOKYO」より)
・渡辺曜「千歌ちゃんは悔しくないの?」(第8話「くやしくないの?」より)
・渡辺曜「やめる?スクールアイドルやめる?」(第8話「くやしくないの?」より)
上記の台詞も、千歌ヒエラルキー上位者の自負から口にした発言とみなせます。
まあ挙げればきりがないのですが、渡辺マウンティングという分析からずれてしまうのでこの辺にとどめておこうと思います。
3.答え合わせ:第11話「友情ヨーソロー」
今までの分析は、「そうとも解釈できる」という域を出ないものばかりでした。第11話が放送されるまでは。
3-1.梨子に嫉妬ファイアーする渡辺曜
第11話「友情ヨーソロー」では、梨子に嫉妬する渡辺曜(と鞠莉が指摘した)の姿が描かれました。
これにより第2話の「無理は言えないよ~」も、渡辺マウンティング的な意味合いである可能性が強まりました。
そこでここでは第11話の渡辺曜の発言について改めて振り返ってみましょう。
渡辺曜「だから、千歌ちゃんが一緒にスクールアイドルやりたいって言ってくれた時は、すごく嬉しくて…!これでやっと一緒にできると思って…!
でも、すぐに梨子ちゃんが入って、千歌ちゃんと2人で歌を作って、気づいたらみんなも一緒になってて、それで思ったの。千歌ちゃん、私と2人っきりは嫌だったのかな~って…」
〈第11話「友情ヨーソロー」〉より
ここでひとつ指摘しておかねばならない点があります。この部分ですね。
渡辺曜「だから、千歌ちゃんが一緒にスクールアイドルやりたいって言ってくれた時は、すごく嬉しくて…!」
これ、言ってないです…!
高海さんが言ったのは「曜ちゃんが水泳部じゃなければ誘ってたんだけど…(第1話「輝きたい!!」より)」という台詞であって、厳密には渡辺さんが正式に誘われる前から勝手に入部したというのが実情です。
渡辺曜はこれまでの発言などを振り返ってみても、どこか高海千歌に対して、一番の理解者であることを信じて疑わない描写が多々見受けられます。「やめる?」「やめない!」のくだりも「自分が千歌のことを一番理解している」という自負の表れでしょう。
また第11話「友情ヨーソロー」における高海千歌との妄想シーンは、渡辺曜自身の抑圧された潜在的欲求を反映しているように思われます。ちなみに妄想シーンで流れていたBGM名は「妄想作戦会議 」というタイトルです。
この「31.妄想作戦会議 」という名前。あれはやはり渡辺曜の妄想だったのですね。 とすると「千歌さんに壁ドンしたり媚声出したりするのは渡辺さんの抑圧された感情だったのか~」とかいろいろ思いました
「『ラブライブ!サンシャイン!!』OST Sailing to the Sunshine」を手に入れたのでレビューっぽいもの - 渡辺曜研究委員会
以上のことから、渡辺曜は
・高海千歌の一番の理解者であるという確信
・千歌さんの発言を捻じ曲げて解釈するに足る、たくましい妄想力がある
という2つの特徴を持つことがわかりました。
3-2.第11話という転換点:ポスト渡辺曜イズム
しかし上記の分析で見られた傾向も、第11話を経ることでなりを潜め、渡辺曜は新たな境地に到達することになります。
筆者はこれを渡辺曜の歴史を取り巻く重大な岐路であるとみなし、敬意をもって「ポスト渡辺曜イズム」と呼んでいます。
そんな第11話「友情ヨーソロー」は、今晩再放送されますね。
以前に第11話を見終わってショックを受けた筆者の記事もありますので、興味があればこちらもどうぞ。「渡辺曜が人間になってしまった~」とか嘆いていた当時の反応が見れます。
4.総括という名の筆者コメント
↑千歌ヒエラルキー上位者を自負する渡辺曜さんの顔
今回の考察は最速放送のときには記事化できずにお流れとなったものです。
それが第11話「友情ヨーソロー」が再放送されるということで、タイミング的にはちょうどいいだろうということで投稿する運びとなりました。
渡辺曜は言動こそ柔らかな印象がありますが、上記のように言葉の節々から彼女の本音を読み取ることが可能です。
もっとも、あくまでそのような解釈もできるというレベルではありますので、断定することはできません。
しかし、人当たりのいい渡辺曜から、これだけの様々な意味解釈ができるという点は特筆に値する事象でしょう。
P.S. 客観的な考察を心掛けたつもりが、結果的にはようちか言説を補完する内容になりました。ようちか沼に落ちそう(手遅れ感)
〈関連リンク〉