依頼されたので『プリパラ』に関する紹介記事を書きます
お世話になっている友人から『プリパラ』について説明してほしいとの依頼を受けたので、紹介記事を書きました。よって『ラブライブ!サンシャイン!!』や「渡辺曜」は一切関係ありません。
目次:依頼されたので『プリパラ』に関する紹介記事を書きます
①『プリパラ』あるいは『プリティーリズム』シリーズとは?
②アニメ『プリパラ』について
③『プリパラ』の学術的論点
④このアニメを中学一年生に見せたとしたら
⑤筆者コメント
『プリパラ』あるいは『プリティーリズム』シリーズとは?
『プリパラ』とは、タカラトミーアーツとシンソフィアが共同開発したアーケードゲームと、それを原作としたTVアニメです*1。
『プリパラ』の前身は『プリティーリズム』シリーズであり、同じくタカラトミーアーツとシンソフィアが共同開発した小学生女児向けのゲーム筐体『プリティーリズム』とそれらを原作としたTVアニメシリーズの後継作品という位置づけになります。ここでは主にアニメについて取り上げます。
前作の『プリティーリズム』シリーズでは第1期の『プリティーリズム・オーロラドリーム』、第2期の『プリティーリズム・ディアマイフューチャー』、第3期の『プリティーリズム・レインボーライブ』、そして歴代シリーズの傑作選の放送を挟み、2014年7月よりアニメ『プリパラ』が放送されました。
テレビシリーズ
第1期:プリティーリズム・オーロラドリーム(2011年4月9日 - 2012年3月31日、全51話)
第2期:プリティーリズム・ディアマイフューチャー(2012年4月7日 - 2013年3月30日、全51話)
第3期:プリティーリズム・レインボーライブ(2013年4月6日 - 2014年3月29日、全51話)
傑作選:プリティーリズム・オールスターセレクション(2014年4月5日 - 6月28日 全11話)
『プリパラ』は前身である『プリティーリズム』シリーズの後継に位置づけられるものの、筐体システムの仕様変更やアニメの主要スタッフの変更により、今までのシリーズとの相違点もしばしば見受けられます’(代表的なのは”プリチケ”の導入など)。
またアニメ『プリパラ』を語る上において、監督である森脇真琴氏の存在は欠かすことができないでしょう。『プリパラ』の世界観の構築は、氏の功績によるところが大きいことが数々の媒体で明らかになっています*2。
ここからはアニメ『プリパラ』についてより詳しく見ていきます。
アニメ『プリパラ』について
【アニメ『プリパラ』あらすじ】
ある日お年ごろの女の子たちに届く招待状。それはファッションやダンス、音楽といった女の子の夢と憧れが詰まった「プリパラ」の入場チケット。そこでは毎日のように、歌やダンス、ファッションセンスを競い合うオーディションが開催され、その様子はTVやネットを通じて世界中に発信される。今やトップアイドルはこのプリパラから生まれるのだ。主人公・らぁらも友だちと同じくプリパラに興味津々。でもらぁらの学園では小学生のプリパラは禁止・・・ところがひょんなことからプリパラに初入場してしまったらぁらは、なりゆきからオーディションに出ることに。どうなる、らぁらのプリパラデビュー!?
プリパラ - YouTube〈https://www.youtube.com/watch?v=kK7peuFP0Lo〉より
アニメ『プリパラ』についてざっくり説明すると、
・プリチケ(「プリパラ」への招待状)の届いた女の子は、誰でも「プリパラ」と呼ばれる仮想空間に行ける
・「プリパラ」でライブを重ね、神アイドルを目指す
・キャッチコピーは「み~んなトモダチ!!み~んなアイドル!!」
といったところです。従来の『プリティーリズム』シリーズと比べると、「変身アイドルもの」としての要素が色濃く出ている点が特徴的でしょう。また『プリティーリズム』シリーズでは男性アイドルユニットが登場したものの、『プリパラ』では「プリチケの届いた女の子しかプリパラに入れない」という設定上、男性キャラはあまりでてきません。
【メインキャラクター】
【その他サブキャラクター】
↑当該画像は「テレビ東京・あにてれ プリパラ」〈http://www.tv-tokyo.co.jp/anime/pripara/chara/index.html〉より引用
主人公である「真中らあら」は自身が所属するユニット「ソラミスマイル」のメンバーである「南みれぃ」「北条そふぃ」や、ライバルユニット「ドレッシングパフェ」のメンバーである「東堂シオン」「ドロシー・ウェスト」「レオナ・ウェスト」と共に、切磋琢磨しながら神アイドルを目指して成長していく、というのが大筋のストーリーとなります。
現在(2016/08/30時点)では3rdシーズン第110話まで放送されています。
『プリパラ』の学術的論点
次に『プリパラ』の学術的論点についていくつか提示してみようと思います。
①「プリパラ」というシステム――「〈女の子〉は誰だってかわいくなれる」
「プリパラ」では小学6年生(1stシーズンでは小学5年生)のらあらや、中学生のみれぃ、そふぃといった様々な女の子が出入りしています。しかし、らあらの学校の初等部の校長を務める大神田グローリア(年齢は30歳代)やらあらのママもプリパラに来場しているシーンがあり、「プリパラ」にとっての〈女の子〉という定義は必ずしも年齢によって区分されるものではないことが分かります(もっとも、二人に限っては昔からのプリパラユーザーでもあるのですが)。
また安藤玲という男性キャラはヤギの格好をすることで「プリパラ」に入ることができるほか(当初はシステムをハッキングして偽装していたらしいが)、第66話にて「プリパラ」には「ヤギ専用のゲート」があり、ヤギもライブを行えることが判明しました。もはや人間という種の壁すらも超越したという意味ではプリパラのシステムがかなり興味深いものであることがわかります。
②『プリパラ』から見るジェンダー論
『プリパラ』は女児向けアニメでありながらも、ときに尖鋭化したジェンダー論の問いを提示することがあります。その代表的なキャラとして挙げられるのが「レオナ・ウェスト」「紫京院ひびき」「緑風ふわり」です。
詳しくは上記リンク元を参考にしていただければと思いますが、「レオナ・ウェスト」はいわゆる”男の娘”です。性別としては男性であるにもかかわらず、プリチケが届いているため「プリパラ」に自由に出入りできます。またバレンタインのときには、めが兄(「プリパラ」のシステムのような男性キャラ)に本命チョコを渡そうとしている描写があったため、現実の言い方に即せばトランスジェンダー的なキャラであるといえるでしょう。
一方、レオナと対比的に描かれるのは「紫京院ひびき」であり、彼女は身体の性別としては女性だが、普段は男性的な恰好や立ち振る舞いをしています。しかしレオナが「あるがまま」と発言するのに対して、ひびきは「所詮この世は嘘とまやかし」と断じ、「本物などない」というスタンスを取っています。この意味で、レオナとは正反対のキャラクターであるといえるかもしれません。
「緑風ふわり」はひびきにプリンセスとして見初められ、ひびきに対して恋愛感情を抱いていたものの、ひびきが女性と知るや気絶するほどの大きなショックを受けてしまいます。しかし、最終的にはひびきと行動を共にするようになり、第89話ではレオナに「ひびきさんと二人、お幸せに」と祝福されています。必ずしもレズビアンとして描かれているわけではありませんが、上記2名と関連が深いキャラという点からここでは紹介しました。
【関連エピソード】
↑「プリパラ」の外でドレッシングパフェと遭遇し、レオナが初めて男性であると判明したシーン。
↑風邪をひいたらあらのもとに、5人がお見舞いに来るのだが、レオナがらあらの服を脱がそうとしてみれぃ・シオンが止めに入るシーン。
客観的に見れば、中学1年生男子が小学5年生女児の服を脱がそうとしている構図。しかしらあら(風邪をひいて判断力が鈍っているのもある)・レオナは特に反応しておらず、6人の中では比較的常識人なみれぃ・シオンが止めに入っているという点がポイント。
↑ひびきの演劇の仕事に、急きょレオナが代役として演じるシーン。劇中劇ですが、物語的にもジェンダー論的にも非常に重要なシーンです。詳しくは関連リンクを見てみてください。
↑好きだったひびきが女性であると知って、ショックを受けたふわりが、再びひびきと邂逅するシーン。上記のレオナとの演劇とも同一話数であるため、ひびきの「演じる」という言葉がキーワードであることが読み取れますね。
『プリパラ』とジェンダー論については以下のリンクが参考になるかと思います。
stream-tomorine3908.blog.so-net.ne.jp
このようなジェンダー論的な描写は、森脇真琴監督のTwitterなどを見ても、意図的なものであることが読み取れます。
ぬか喜びしたけどまだまだ不具合攻撃収まらない。今回は写メで送ります
— 森脇真琴 (@iyaiyaenn) 2015年12月9日
74話表紙。 レオナ ひびき どっちの服もいいデザイン。 男の子 女の子 どっちでもない子 どっちもな子。 いろいろあるよ。いろいろあるね。 pic.twitter.com/k1gaPAMjqm
最近漢字が面白いんです コンテ作業の途中でこんな字生まれたけど どう読むかで楽しめるので バスを待ってる時とかに使ってください pic.twitter.com/nAjhluwrx3
— 森脇真琴 (@iyaiyaenn) 2015年2月17日
そのほかとしては、
・ボーカルドール・ファルルから見る自我
・語尾アイドル――語尾から見るキャラクター論
・有機生命体としての掃除機リナちゃん
といった考察に足るだけの様々なテーマは見受けられますが、『プリパラ』ではやはり上記のジェンダー論にまつわる点が非常に有益なテーマとなるのではないかと思います。
このアニメを中学一年生に見せたとしたら
一応みれぃやレオナといったキャラは、1stシーズンでは中学一年生だったので、非常に親近感はわくのではないかと思いますね。
アニメ『プリパラ』において一貫しているテーマは「ありのまま」という言葉です。第32話の「みれぃ、ぷりやめるってよ」では、南みれぃが学校生活での厳格な自分と、アイドルしての自分の2つに板挟みとなって、悩むというお話がありました。
そこでは雨宮くんというみれぃのストーカーよき理解者によって「ぷり(南みれぃのアイドルとしての語尾)も含めて、そのどちらもが南みれぃの本質である」と諭され、みれぃは自信を取り戻します。
多感な時期に入り、自己のアイデンティティに疑問を覚える中学時代の子供たちにとっては、大いに響くテーマなのではないでしょうか。
それとは別に、カオスで元気でパロディも多いアニメとして純粋に楽しんでもらえるのではないかとも思いますけどね。
筆者コメント
今回は『プリパラ』についての紹介記事を書きましたが、当ブログは「渡辺曜研究委員会」であり、「渡辺曜について考察するブログ」であることは変わりませんので、あくまで例外的な措置になります。
以降は再び「渡辺曜」『ラブライブ!サンシャイン!!』にまつわる記事を投稿していきますのでよろしくお願いします。
渡辺総研
【参考文献】
ソーシャルゲームと「プリパラ」のアニメ--社会への悪影響を鋭く描く
『プリパラ』89話(最終回)感想 ひびき様の誕生日会でありひびふわの結婚式だったか!あじみ先生残留やったぜ!! : サブカルート
*1:筐体ゲームの楽しみ方はネットワークと対極にある - 『プリパラ』誕生秘話と今後の期待、タカラトミーアーツ・大庭晋一郎に聞く【前編】 | マイナビニュース〈http://news.mynavi.jp/articles/2016/04/12/pripara/〉より
*2:『プリパラ』キーマンに聞く“ヒットの理由” 多様性とコミュニケーションでファンの輪が広がる(1/3) - ファミ通.com〈http://www.famitsu.com/news/201506/05079668.html〉より