渡辺曜研究委員会

渡辺曜について考察するブログです。

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中間報告レポート:「〈渡辺曜〉という名の現象~その人気を再考する~」

中間報告レポート:「〈渡辺曜〉という名の現象~その人気を再考する~」

 当ブログを開設して一ヵ月近くほど経ちました。アニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』も第8話まで放送され、物語も折り返し地点を迎えたといえるかもしれません。

 

 そこでこれまでの分析結果を元に、渡辺総研の「渡辺曜に関する中間報告的な考察」を提示しようと思います。

目次:中間報告レポート:「〈渡辺曜〉という現象を分析する~その人気を再考する~」

①渡辺曜人気はどこから来るのか

②描かれないことで描かれる渡辺曜

③弱さを見出すという図式と”ようちか”の関連性

④仮説②:「渡辺曜はそれ単体では完結しない〈コンテクスト〉そのものである」

⑤〈二者相関のコンテクスト〉としての渡辺曜

⑥総括

⑦渡辺研究庫:資料file-17「Twitter8月14日まとめ」

 渡辺曜人気はどこから来るのか

 「渡辺曜人気はどこから来るのか」この問いは当ブログが掲げる最大の謎であり目的でもあります。本記事では今までの分析結果などを踏まえつつ、現時点での渡辺総研の結論を示したいと思います。

 

 ただ「渡辺曜の人気」という議題設定はあまりにも広すぎるので、ここでは「なぜ人々は〈渡辺曜〉を語るのか~その要因はどこにあるのか~」という問いに細分化してお話ししたいと思います。

 

*「渡辺曜」の人気については過去記事:『渡辺曜を再考する①:「渡辺曜とは何者か?~その人気の源泉はどこにあるのか~」』、検索ワード数による渡辺曜人気の検証については過去記事:『渡辺曜を再考する④:「統計データから読み解く渡辺曜人気」』をそれぞれ参照してください。

wtnbyou.hatenablog.com

wtnbyou.hatenablog.com

 他にも魅力的なキャラがいる中で、なぜ渡辺曜はここまで支持されるのでしょうか。その要因としてキャラの掘り下げ方の違いがあります。

 

 一般的にキャラの魅力を伝えるには、視聴者に「感情移入」させる方法が一番です。この方法をもっとも手っ取り早く行うには、そのキャラの「弱さ」を描くことが重要となります。たとえば「冷酷無比に他人を殺してしまうようなキャラが、唯一の肉親である妹だけは殺せなかった」といったような描き方をすることで、殺人者という視聴者からほど遠いに存在が、肉親への情愛を捨てきれない「人間らしい」キャラとして感情移入することが可能となります。

 

 ここでは「弱さ」と書きましたが、必ずしもマイナスな要素である必要はなく、むしろそのキャラクターに備わっている要素からかけ離れた要素を付け合わせることで、そのギャップが魅力的に映る・キャラとして深みが出るということです。

 

 『ラブライブ!サンシャイン!!』のキャラでいえば、中二病と思われていたが、実はリア充になりたいだけの普通の女の子だったと描かれた津島善子がよい例です。

 

描かれないことで描かれる渡辺曜

 では、渡辺曜は作品内でどのように描かれているのでしょうか。少し古いですが、過去記事でも渡辺曜の描写についてまとめた一覧があるので見てみましょう。

▼プロフィール
名前 渡辺曜
声優 斉藤朱夏
学年 高校二年生
誕生日 4月17日
血液型 AB型
身長 157cm
趣味 筋トレ
特技 高飛び込み、体感天気予報
好きな食べ物 ハンバーグ、みかん
嫌いな食べ物 刺身、パサパサした食べ物
渡辺曜ちゃんの声優・誕生日・自己紹介・プロフィールまとめ【ラブライブ!サンシャイン!!】 | Aqours☆PUNCH!! ~ラブライブ!サンシャイン!!情報サイト~〉より


▼その他情報まとめ
・高飛び込みの得意技は前逆さ宙返り3回半抱え型(この技が試合でできるのは世界で数人)
父親は定期船の船長 将来は父の跡を継ぎたい
・トレードマークは「ヨーソロー」と敬礼
・制服が大好き
・千歌ちゃんとは幼馴染
・新級祝いにスマホを買ってもらう
・絵心がある
・衣装も作れる
・水泳能力はAqours内で松浦果南と2トップ(持久力はダイビングをやってる果南、瞬発力は自分が優れているとのこと)

▼第3話でわかった新たな情報
ダンスのフォームの確認ができる(高飛び込みのおかげで)
・運動神経・リズム感ともに優れている
・千歌ちゃんの一番の理解者(やる気を引き出したりできる)
・コミュ力が高い(見知らぬ他人にも容易にビラを配ることができる・知らない人でもすぐさま仲良くなって記念撮影もできる)
・変装した津島善子に唯一気づく。
・砂浜に書かれた「Aqours」の文字を初見で正しく読む

 これは第3話までのものですが、Twitter上でも「渡辺曜のハイスペックさ」に驚いている声が多く見受けられました。

  それを裏付けるように、検索キーワードで「渡辺曜 才能」「渡辺曜 完璧」「渡辺曜 弱点」と調べて当ブログにくる方もいらっしゃるようです。

 

 少なくとも、渡辺曜は

・人の感情の機微に気づく人格者であり

・千歌のためにスクールアイドル部に入部、衣装づくりなど様々な側面から尽力し、

・高飛び込みの才能にも恵まれている

(他にもありますが、ここでは割愛)

といった「完璧超人」として描かれています。検索エンジンでその「弱点」を調べてしまうくらいには、弱点がないと言えるかもしれません。

 

 一応、「私服がダサい」や「キャラが薄い」といった難癖はつけられるのですが*1、少なくとも視聴者に感情移入させるだけの「弱さ」は作品内で一切描かれていません*2

 

 では渡辺曜は魅力的に描かれていないのかというと、そんなことはなく、むしろ逆の現象が起こっています。

 

 つまり、通常ならば感情移入できないはずの完璧な〈渡辺曜〉に対して、そこに弱点(=人間性)を見出そうとする図式が出来上がっているのです。

 

  これは非常に興味深い現象であります。事実、渡辺曜は第3話までは中心的に出番がありましたが、第4話(花丸・ルビィ加入回)、第5話(ヨハネ加入回)と回を追うごとに登場シーン数は抑え気味あるいは画面中央からは外れ気味となっていました。しかし、そんな中でも渡辺曜界隈ではたったひとつのシーンや一言の台詞を巡って様々な考察などが繰り広げられ、むしろ渡辺曜メイン回でなくとも、渡辺曜考察が進められるという実態がありました。

 

 筆者も過去記事にて、渡辺曜の所作から非言語的メッセージを読み解くという試みをやったことがあります。

wtnbyou.hatenablog.com

 つまり渡辺曜にはメイン回がまだありませんが*3メインとして描かれることはなくとも、むしろ描かれないまま小出しにされた情報によって、それに対して考察が加えられるという現象が生まれているのです。これは製作側が意図したものなのかどうかは、現時点では断定できません。

 

弱さを見出すという図式と”ようちか”の関連性

 〈完全性〉としての渡辺曜に弱さを見出そうとする構図があると前章で述べました。その代表的な取り組みが『ラブライブ!サンシャイン!!』のカップリング最大勢力である「ようちか」であるといえます*4

 

ようちかとは、『ラブライブ!サンシャイン‼︎』に登場する、高海千歌と渡辺曜のカップリング。

ようちか (ようちか)とは【ピクシブ百科事典】〉より

 

 詳しくはネタバレになるため言及を避けますが、ようちかの最大の魅力は「互いのことを想い合っているのに、すれ違ってしまう二人」「報われない渡辺曜」という点にあるものと思われます*5

 

 筆者は先の章で「渡辺曜は感情移入に足るだけの弱さの描写がない」と述べました。しかしようちかの中での渡辺曜は、「あらゆる能力に恵まれているのに、もっとも欲しい人(=千歌)には手が届かない」という言説のもと、「決して報われない渡辺曜」という要素を見出しています。

 

 この「報われない」という点は、おそらくすべての人間にとって共感できる要素、つまり感情移入に足る人間らしさと言えます。完璧超人としての渡辺曜に、「報われない」という属性を付け足すことで、一気に身近に感じることができる。”ようちか”の魅力、あるいは渡辺曜の魅力には、そのような点が大きく関わっているのではないでしょうか。

 

 またご紹介したようちか意外にも、渡辺曜のカップリングは多岐にわたります。具体的には”ようりこ(桜内梨子×渡辺曜)”、”ようよし(津島善子×渡辺曜)”、”ようまる(国木田花丸×渡辺曜)”、”ようるび(黒澤ルビィ×渡辺曜)”、”ようしま(高海志満×渡辺曜)”、などが確認されています(勢力の大きさも、この順番だと思います*6

 

 筆者はこの渡辺曜の多様なカップリング性や、上記の考察をもとに以下の仮説を立てました。

 

仮説②:「渡辺曜はそれ単体では完結しない〈コンテクスト〉そのものである」

 ここでは根拠を示せないのですが、筆者の体感として、渡辺曜単体というキャラが好きというよりは、上記の”ようちか”を始めとしたカップリング、つまりあるキャラとの関係性という文脈で渡辺曜について語っている方が多いという印象があります。

 

 このことをヒントに、次のような捉え方をしてみました。すなわち「渡辺曜とはそれ単体で存在するもの」ではなく、「他者との関係性の中で位置づけられる〈コンテクスト〉そのもの」であるというものです。

 

 この仮説に立ってみると、次のように考えることができます。

 

〈二者相関のコンテクスト〉としての渡辺曜

 ここでは便宜的に「あるキャラAとあるキャラBの間に生まれる相関関係」という意味合いを〈二者相関のコンテクスト〉と呼ぶことにします。

 

 ”ようちか”を例にした場合、ここでは「高海千歌と渡辺曜の間の相関関係」を〈二者相関のコンテクスト〉(=”渡辺曜”)と定義しています。ここでは〈キャラとしての渡辺曜〉と〈コンテクストとしての渡辺曜〉が大変区別しにくいので、後者を〈渡辺曜概念〉と呼ぶことにします。

 

 渡辺曜概念は”ようりこ”、”ようよし”などの関係性なども同様に当てはまるので(というかそれらの関係性を言い換えただけなので)、わかりやすいと思いますし、ここまでならばわざわざ名称を新たに作る必要もないはずです。

 

 しかしここでもっとも重要なのは、渡辺曜概念は「視聴者との関係性」をも組み込むという点です。

 

 この仮説の根拠について、ここでは詳しくは述べないので、「なんのこっちゃ」と思われる方が大半であると思います。これを検証する内容については、後日の記事で補完的に述べていければと考えているので、しばらくお待ちください。

 

 しかしこれを導くに至った経緯だけを説明させていただきますと、筆者が渡辺曜にまつわる様々な言説が目のあたりにし、「とてもこれを一キャラクターの枠組みでは説明できない」と感じるようになったためです。

 

 筆者の考える渡辺曜研究とは、「渡辺曜というキャラクター」についても当然含みますが、メインとしてはこの「渡辺曜概念」に対する探求であるということだけは、ここではっきり示しておきたいと思います。

 

 この「渡辺曜概念」を支えるのは、繰り返し述べている「渡辺曜の完璧性と、そこに弱さを見出そうとする力学」であります。つまり「こんな完璧な子、欠点がないはずがない」という思いが、様々な言説を〈渡辺曜〉に注ぎ込むのです。

 

 その意味で、〈渡辺曜〉とは視聴者の言説が蓄えられる表象(あるいは、ある種の”空白”)であり、そうしたメカニズムを全て包括したものが〈渡辺曜概念〉という舞台装置であるといえます。

 

 自分でもまだ用語や理解の整理が完璧ではないという自覚はあるので、今回はここらへんでとどめておこうと思います。

 

総括

 今回の中間報告レポートでは以下のことを示しました。

・渡辺曜は感情移入のための弱さ(=人間らしさ)の描写がなされていない

・通常ならば感情移入できないはずの完璧な〈渡辺曜〉に対して、そこに弱点(=人間性)を見出そうとする図式が出来上がっている

・「ようちか」は「報われない」という属性を渡辺曜に付与している

・用語・概念の整理:「渡辺曜というキャラクター」、「〈渡辺曜〉という表象」、「〈渡辺曜概念〉という現象」

 

 今回は渡辺総研の公式見解を示すという目的のため、仮説の検証などについてはほとんど触れることができませんでした。ただ、実際に筆者が様々な考察を行った末、上記のような仮説や結論を得ることができたという経緯があります。よって、以降はこれらの根拠となった考察記事を投稿していくとともに、それらはこの記事で述べた結論に向けて収束していく内容であると考えていただいて結構です(最新話の放送によっては軌道修正する可能性はあるが)

 

 引き続き、〈渡辺曜〉、〈渡辺曜概念〉への理解を深めるべく、活動していきたいと思います。

                      2016/08/23 渡辺総研

 

 渡辺研究庫:資料file-17「Twitter8月14日まとめ」

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2016年8月14日の「渡辺曜」関連ツイートのまとめです。

 

 

*1:これは筆者がネット上で実際に確認した意見です

*2:第8話を視聴した方はそう思われないかもしれませんが、ここではネタバレ回避の意味も込めて言及しません

*3:1話を渡辺曜回とみなすかは、非常に微妙なところです

*4:最大勢力というのは、筆者の体感やPIXIVでのイラスト・小説投稿数を根拠としています

*5:必ずしもすべての”ようちか”にこれが当てはまるわけではない。ようちかの中にもいくつかのレベルや種類の違いがある

*6:この根拠は脚注4と同様